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脳が委縮する
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どの種類の虐待であっても、子どもの心を脅かすものであることは間違いないでしょう。そして、昨日の終わりに触れたように、驚くことに、虐待によって子どもの脳が委縮することが医学的な実験からわかっています。
例えば、身体的虐待を受けると痛みを感じる脳が小さくなります。「痛い」と感じないようにするために、脳が痛みに鈍感になっていくという悲しい選択です。あるいは、性的虐待の場合は視覚をつかさどる部分が委縮します。視覚と記憶は強くかかわる部分なのだそうです。つまり、性的虐待を受けた記憶を保存しにくくするようにと、脳が自然に変化していくのです。
虐待によって傷つけられるのは心なのですが、心の実際の在り処(ありか)は脳です。そう考えればわかりやすいかもしれませんが、現実的に脳が小さくなっている画像を見ると、息の詰まる思いがしてきます。
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ウッ…と思う方は大丈夫
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不適切な養育(暴言や嫌味、威嚇、罵倒、無視、放置、激しい夫婦げんかや家族間のいがみ合いなど)によって、物理的に脳が小さくなってしまうということをご理解いただけたところで、では、そのことが一体どんな影響を及ぼすのかというお話を進めていきたいと思います。
不適切な養育をまったくしていない、と感じられる方、もしくは自覚はあっても言い訳が先に出てくる、という親ほどわたしは危ないと思っています。(思い当たる節がちょっとあるな、マズいな・・・)と素直に捉え、受け入れられる勇気のある方は大丈夫、むしろ今後のためになるはずです。
どうか、ご自身を責める方向やお子さんを必要以上に心配する意識ばかりに流れないようにして下さい。これだけは、お願いです。
繰り返しになりますが、他人事だと感じている方の方が問題です。
なぜかと申しますと・・・
「気付くところが出発点」だからです。
わかりやすいお話をします。
小4児童が虐待によって死亡した事件は記憶に新しいですね。父親はなんと供述していたか、思い出してください。
「しつけだと思ってやった」です。
当人は悪いことをしていたと気付いていないのです。それどころか、子どものためになる、くらいの意識でいたということになります。これは個人的見解ですが、「しつけだと思っていたのだから仕方ないでしょう」と言い逃れするというよりは、本気で「しつけ」だと信じて疑わなかったのではないかと考えています。本当に気付いていなかった可能性も十分あると思います。
やはり「問題を問題だと気付くところが出発点」なのです。
子育てにおけるどんな問題もそうです。子どもが持ってくる問題やトラブルは、すべて親が受け入れるところが出発点です。そして同時に、親自身が気付かないまま、マルトリートメントをしてしまっていることだって、あるかもしれないという意味も含んでいます。(良かれと思ってしていることが、マルトリートメントになっていることもある、という意味。)だからこそ、いつも自分事で考える癖と勇気を持っていてほしいと、わたしはいつも訴えています。
さて、明日からは、マルトリートメントが引き起こす悪影響についてお話していきますね。(何度も言いますが、自分を責めすぎるのだけはやめてください(笑)それこそ子育てに悪影響だから!)